入場無料の展覧会


クリックすると大きな画像になります/アルフォンス・ミュシャ展
8月5日から7日まで、地元のメッセ会場の小会議場で
AlphonseMuchaアルフォンス・ミュシャ展が行なわれました。

私はこのミュシャの存在をそれまで知らなかったのですが、
彼の作品を観た時、「あれ?クリムト?」と一瞬思いました。

彼の経歴を見ると、なるほど、と思います。

チェコスロバキアで生まれ、その後、ウィーンで勉強しているのです。
丁度時期的に、クリムトと同時期に活動しています。
ミュシャは版画なので、クリムトとは絵のタッチが違いますが、
作風はとても似ています。

ちなみに私はクリムトが大好きです。

ミュシャはその後は私も住んでいたミュンヘンのアカデミーで勉強し、
パリで活躍しています。
煙草や香水などの広告のデザイン画の世界を確立したと言われているそうです。

当時は、現代のようにテレビなどのメディアがなかったので、
こういった絵画が広告に使われていたそうです。
なんとも贅沢な広告です。

と云うわけで、早速炎天下の中、猛ダッシュで展示会場に向かいました。

何故猛ダッシュか、と云うと、数日前に新聞の折込で入っていたちらしを持参すると、
ミュシャのオリジナルのしおりとカードコレクションをくれるからです。

もっと時間に余裕を持って行けばよかったのですが、
当日の朝になって、急にピアスの穴をもう一つ増やしたくなって、
部屋で汗かきながら、右耳に安全ピンを刺していたのです、、、、。

なかなか入れない、展覧会

そんなこんなで、ギリギリ5分前に会場に着くと、
まだ15人程しか並んでいませんでした。

もう直ぐ入れるかな、とちらしをパタパタと煽って待っていましたが、
準備に時間がかかっているようで、オープン時間になっても入口は開きませんでした。

結局、10分ほどオーバーしたでしょうか。
ようやく開いた、と思いきや、今度はなかなか中に入れてくれません。

ちらし持参の人にプレゼントを渡していて、時間が掛かっているのか?
と思いましたが、プレゼントを渡すくらい、ほんの数秒で終わること。

しかし、待てど暮らせど、列は前に進みません。

先頭の方を見てみると、何やら受付で時間が掛かっているようです。
何やっているんだろう?と思ったら、わざわざ一人一人の来客者に簡単なアンケートを記入させているのです。

私は、日本の展覧会に行くのは初めてなので、よく分かりませんが、
入口で手間を取らせることは稀なんでしょうか?

お芝居などを観に行くと、感想などのアンケートは
終了後に希望者だけ記入して貰うのが普通ですが、
絵画の展覧会となると事情が違うんでしょうか、、、。

ドアが開くのに待たされ、中に入るのに待たされ、
ようやく入った、と思ったら、今度はなかなか出れない事態が発生したのです、、、。

なかなか出れない、展覧会

数十分も待たされ、ようやく中に入ると、
ところ狭しとミュシャの版画作品が展示されていました。

ミュシャは初めてでしたが、作風がクリムトに似ているので、
なんだか初めてのような気はしませんでした。

ドイツに居た時は、時間があればよく美術館に行っていたのですが、
帰国してからは一度も行けずにいました。

久々の絵画、大好きな版画ということで、かなりワクワクしながら観ていると、
何やら若い女性の楽しげな話し声が聞こえてきました。

今回の展示会を主催している会社の社員さんが、来客者に作品の説明をしていました。

しかし、何だか美術館の学芸員とは雰囲気が違い過ぎる、、、。

社員全員が20代後半くらいの若い人たちで、服装もかなりお洒落に着飾っていました。
話口調も、友達に話すような感じで、学芸員とは程遠い、、、。

まさに、服屋さんでしつこく接客してくる店員さんのよう、、、。

(こういう展覧会って、静かにじっくり作品を観るものではないだろうか、、、?)
と思って観ていると、私のところにも若い女性がやって来ました。

第一声、
「ミュシャは初めてですか〜?」
でしたが、
「そのお洋服、入ったばかりなんですよ〜。」
と、私には聞こえました、、、、。

女性社員さんは、よく云えばフレンドリー、悪く云えば馴れ馴れしい口調で、
ミュシャの説明をしてくれました。

よく聞くと、実際に100年前のミュシャの時代に刷られた版画作品は1,2点しかなく、
あとは今年の5月にアメリカで、当時の石版で作品を復元した版画ということが分かった。

だから入場料無料なんだ、、、、。

(実際の100年前の作品を展示していたら、とても入場料無料でやってられないよね、、、。)

そんなこんなで、ようやく女性社員さんと離れたと思ったら、
今度は違う女性社員さんが、
「ミュシャは初めてですか〜?」
と、先程の社員と同じように話し掛けてきた。

マニュアルでもあるのか?
というくらい、同じ質問をしてくるので、私も
「初めて観た時はクリムトかと思ったんですよ。」
と同じ返答を繰り返した。

周りを見てみると、数十人はいるであろう社員は、全員来客者の接客をしていた、、、。
(なんだか、不思議な展覧会だなあ、、、、。)
と、一抹を不安を覚えた、、、。

すると、私に接客していた女性は、作品とは関係ない個人的な話しをして来た。

(最初に来た社員さんも同じ個人的なことを訊いてきたが、これもマニュアルなんだろうか、、、?)

いちいち適当に答えると、その社員さんはいちいち目を大きく見開いて、
「え〜〜〜!そうなんですか〜〜〜?」
とかなり大袈裟なリアクションをした。

(え?そんなリアクションされるような話じゃないんだけど、、、。)
と心の中で突っ込んでしまった。

オーバーリアクションの社員が離れ、ようやく落ち着いて作品を観ていると、
またもや違う女性社員が近付いて来た。

「ミュシャは初めてですか〜?」
「はい。初めて観た時はクリムトかと思ったんです。」
と、この日、3度目の返答をした。

作品の説明をしつつ、またもや個人的な話をしているうちに、
今度の社員さんはドイツ旅行をしたことがある、ということで、
共通の話題が出来てしまい、思わず私も話に乗ってしまった、、、。

共通性を持ってしまったことで、その社員さんはどこまでも私に着いて来た、、、、。

(いちいち説明してくれるのはいいんだけど、静かにゆっくり作品を観たいんだよね、、、。)
と、思いつつ、それを云えばいいのに、云えない私がいる、、、、。

まあ、観るだけでは知り得ない作品のことを説明してくれるのはいいんですが、、、。

その社員さんは軽く説明して、どこかに行った、と思いきや、
再び戻る、という行動を繰り返した。

社員さんが居なくなったのを見計らい、
先程、人が沢山いてゆっくり観れなかった作品をもう一度観ていた私を、
またもやその社員さんは追い掛けて来た。

「あれ?また観ているんですか?」
「あ、はい。ゆっくり観れなかったので、、、。」
「あちらに目玉の作品があったんですけど、ご覧になりました?」
「いや、観てないです。」
と、折角このまま帰ろうと思っていたのに、奥の方に戻されてしまった、、、。

そして、社員は何やら黒いファイルを手にし、
「今、当社の会員になるといろいろお得なことがあるんですよ〜。」
と、入会の勧誘を始めた。

これで全てが分かった。

展覧会には相応しくない社員の派手目の服装、全員同じような接客方法、
これは全て会員を確保するための営業マニュアルだったんだ〜!!!

年15,000円の会費を払い、会員になると、
2ヶ月に一度美術に関する冊子を送ってくれ、
オリジナルのグッズなどをくれる内容。

「15,000円は高いですね。」
と云うと、
「でも、それ以上にお得なんですよ〜。
お客さまは美術に関心があるようなので、凄くお勧めです。
先日も、会員になった人から“入会してよかった”って感謝されたんですよ〜。」

こ、これはエステの勧誘か、、、?
と思うくらい、しつこい説明は延々と続き、
「15,000円は無理です!」
と断わると、今度は、
「無料のコースもあるんですよ。」
と、無料会員の説明をして、
「あちらのテーブルで記入しましょう。」
と、私を中央のテーブルに誘導した。

よく見ると、他のテーブルでも私と同じように勧誘されている人が数人いた、、、。

(私ってそんなに勧誘し易い顔付きでもしているんだろうか、、、。)

社員さんは奥の部屋からペンを持ってきて、
「じゃ、まずはお名前から記入して下さい。」
と、軽く云って来た、、、。

(いや、私入会するなんて云ってないし、、、。)

無料会員カードは、クレジットカード機能もついていた。
私は不必要なカードは作りたくないので、その旨を伝えると、
「キャッシングのところのゼロにチェックすればクレジットカードとして使えないから大丈夫ですよ。」
と一蹴されてしまった、、、。

(いや、その前に入会する気なんぞ、さらさらないんですけど、、、。)
と、思いつつ、云えない消極的な私がいた、、、。

それでも、しつこい勧誘を断わると、
「じゃあ、今度また近くで展覧会があったら連絡するので、住所と電話番号を教えて下さい。」
と新たな記入用紙を奥から持って来た。

(もう!なんてしつこいんだ、、、。住所と電話番号で解放してくれるだったら書きますよ!)
と、半ば投げやりで記入した。

(まあ、どうせ電話は携帯だから、拒否すればいいことだし、手紙が来ても捨てればいいことだし、、、。)
とさっさと住所と氏名、携帯の番号を記入し、
社員さんから名詞を受け取り、丁重にお礼を云ってようやく展覧会から解放された。

おそらく、普通に作品を観れば30分くらいで終わる展覧会が、
結局1時間半以上掛かってしまった。

なんていう展覧会だったんだ、、、、。

主催の会社の営業マニュアルを見てみたいよ。
きっと、会員にさせるノルマがあるんだろうなあ、、、。
と、無料で貰ったミュシャのしおりとカードコレクションを観ながら、
これを観る度に、あの社員たちを思い出すのか、、、、
折角ミュシャという、素晴らしいアーティストの作品を知ることが出来たのになあ。
と、とても複雑な感情を抱いてしまった、、、、。




アルフォンス・ミュシャ作品集新装版アール・ヌーヴォーの華
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