主な登場人物




文明の利器
5月下旬、ようやく肌寒い日々が和らぎ、街の花壇には美しい花が手入れされるようになった。
その日は祝日で学校が休みということもあり、
私とクラスメイトのmh、最近入学してきたhrと一緒に世界遺産ヴィース教会に行くことにした。
待ち合わせは既に私たちの間では定番になったミュンヘン中央駅の大型テレビの前。
バイエルンチケットが使用出来るのは9時以降
なので、その時間に間に合うよう、
8時45分に待ち合わせをして、一番初めに到着したのは私、その後mhがやって来た。
私たちは先にバイエルンチケットを購入し、
待ち合わせの時間に遅れているhrを
待っていたが、待てど暮らせど、hrは現れない!
私たちは心配になったが、彼女のステイ先の電話番号も知らない、
3人のうち誰一人として携帯電話を所持していなかった、、、。
乗る予定だった電車の発車時間も過ぎ、気付くともう10時を過ぎていた、、、。
連絡する術がない為、私たちはとにかくhrを待つしかなかったのだ。
すると、hrが申し訳なさそうに走ってやって来た。
「ごめんね〜!バス1本乗り遅れちゃった〜!」
hrのステイ先は郊外で、最寄の駅に向かうバスも本数が少なく、
通学するのに非常に不便な場所で、ステイ先を替えて欲しいと数度に渡って学校側に訴えたが、
その訴えは却下され続けていたのだ、、、、。
[まったく、ドイツ人っていうのは
頑固っていうか、融通が利かないっていうか!]
とにかく、hrが無事で安心した私とmh。
しかし、この日こそ携帯電話という文明の利器に感謝したことはなかった、、、。
親子かよ!!!
ヴィース教会までは電車でフッセンまで行き、そこからバスに乗り換えるのだが、
念のため駅に隣接しているツーリストインフォメーションで確認することにした。
「すみません、ヴィース教会まで行きたいんですが、、、。」
職員のお兄さんにmhが云うと、
職「ああ!ドイツ語話せるんだね〜。」
やはり、外国人がドイツ語を話すのは珍しいらしく、こういったことは滞在中はしばしば
あった。
お兄さんは端末でヴィース教会の情報を調べてくれ、公式サイトに日本語のページが
あったのでそれを見せてくれた。
[って云うか、お兄さん3人が
日本人ってよく分かったね。
アジア人なんてみんな一緒で分からない!って云う人もいるのにさ。]
駅構内で昼食用の食べ物と飲み物を買い、電車に乗り込んだ私たち3人。
[中央駅の売店は高いんだよ〜。]
2時間かけてフッセンまで行き、そこでヴィース教会行きのバスに乗り込んだが、
乗客は私たち3人と運転席の近くに座っていた女性とその幼い子供だけだった。
世界遺産の教会ともなれば、多くの人が訪れると思っていたので、
余りにも少ない乗客にこのバスは本当にヴィース教会まで行くのか、私たちは一抹の不安を感じていた。
バスは出発し、一旦大型スーパーのようなところで5分程度停車した。
その後はどんどん田舎道を走り、ヴィース教会に着いたのはフッセンを出発して
1時間程経っていた、、、。
ようやく到着し、バスを降りようとすると、
出発前から前方に座っていた女性と子供は運転手となにやら会話をしていたが、なんと、
3人は親子だったことが判明した。
「なんだ!親子かよ!」
乗客は私たち3人だけだったのだ、、、。
見た目と大違い!
バスを降り、周囲を見渡すと、教会目当ての観光客が大勢いた。
どうやらヴィース教会に来る人は、殆どが自家用車か、ツアーの観光客だった、、、。
世界遺産、ということで、どれだけ素晴らしい教会なのか、
楽しみにしていたが、草原にひっそりと建つ教会はなんともシンプルで、小さな教会だった。
しかし!
ドアを開け、一歩中に入ると、、、、。
「どわ〜!何じゃこりゃ〜!」
松田優作もビックリ。
なんとも風光明媚な装飾が施されているじゃありませんか、、、、。
「外見とは大違いだなぁ、、、。」
思わず息を呑むほどの美しさに、ただ座って口をアングリと開けて見つめるだけだった、、、。
教会を後にして、駐車場の方へ行くと、何やらちょっとした人だかりが。
今日は休日ということもあって、地元の消防署の人が民族衣装を着てビールを飲んだり、
楽器を演奏したりしていた。
バスが来るまでその様子を見ていた私たちだが、
近くにいた馬車の馬が脱糞したので、お土産売り場などで時間を潰すことした、、、。
帰りのバスが来て、再び乗り込むと、
行きと同じ運転手とその妻、子供がまたもや同乗していた。
再び1時間かけてフッセンまで行き、そのから2時間余りかけてミュンヘンまで戻った。
「教会にいた時間より、移動の時間
の方がはるかに長かったよ、、、。」
「前日に先生が云っていた通り、おじい
ちゃんおばあちゃんばっかりだったね。」